荒野で二人・Original

橘睦月さんという方が管理するオンライン小説サイト。そして今回紹介するのは、橘睦月さんがこのサイト上で連載しているオンライン小説『カーマリー地方教会特務課の事件簿』だ。

連載小説『カーマリー地方教会特務課の事件簿』

一見、コテコテのファンタジー小説である。中世のような架空の世界。剣あり、魔法あり、モンスターあり。多分、この時点でこのコラムにまったく興味を失う人も多いだろう。”ファンタジー”をいう言葉を聞いた時点で、拒否反応を示す人は少なくない 。
しかしこのオンライン小説は、そんな人にもぜひ読んでもらいたいものだ。

コラムとして紹介するくらいだから内容が面白いのは勿論なのだが、まず文調がまったくファンタジーしていない。
前述のように小説の舞台は架空の世界なので、時代背景の説明などの部分は思いっきりファンタジーだ。が、それ以外の部分、例えば登場人物の言動や行動、そして随所に散りばめられているツボを突いたギャグなどは、まったくもってファンタジーを感じさせない。だから、ファンタジーを毛嫌い する人にも十分に楽しめると思う。

そして、これが一番肝心なのだが、この小説全体に流れるテーマが実に興味深い。そのテーマというのが”信仰”なのである。

架空の世界だからこそ書けるもの

この小説の架空の世界(国)では、ひとつの宗教が信じられている。そして、その宗教には幾つか宗派があり、過去、その宗派の間での様々な対立の時代があった。小説の舞台は、そんな対立が ひとまず落ち着いて均衡を保っている状況での、ある地方教会。
そして主人公は、その教会に勤める聖職者達で、彼らはその宗教、教会に従事する者達の不正行為を取り締まったり、悪魔、モンスター等の怪異な存在から住民を守ることを務めとする、『特務課』という部署に属している。
そんな主人公達が遭遇する事件や日常が、この小説では語られているのだが…。

当然、彼らは教会に勤めているのだから、”基本的に”信仰心の厚い者ばかりだ。だがしかし、彼らが遭遇する事件、そして現実の数々は、その信仰心を根底から揺さぶってゆく。(単純にギャグの話もあるが)
これがまた”きわどい”。ちょっと考えれば、この小説の架空の宗教のモデルが推察できる。そして、小説の中の主人公達の苦悩や悲しみが、現実の私達の世界における宗教への信仰心がもたらした(今尚もたらしている)悲劇に、余りにもリアルに重なってゆくのだ。

多分、この小説は”ファンタジー”という体裁をとっているからこそ、ここまで突っ込んだ形で”信仰”という重いテーマを書くことができるのだろう。というか、架空の世界を舞台にしなければ、この小説の内容はマジでやばいと思う。
僕としては、作者の”信仰”というもの対する考え方に、とても共感する部分があるんだけどね。

…”宗教”とか、”信仰”とか、小難しい話を続けてしまった。が、そういうことは置いておいても、この『カーマリー地方教会特務課の事件簿』は、十分に読み応えがあり面白い。本当にお勧めだ。ぜひ読んでみてほしい。

注意しましょう

ただ、ひとつだけ注意を。
この『カーマリー地方教会特務課の事件簿』、なかなかの長編である。だから、時間に余裕のある時に読みにゆくように。ホント、一度読み出したら止まらないから。
例えば、職場での昼休みとかもっての外。寝る前とかなら、夜更かしをする覚悟をしてから読み始めましょう。

いい?僕は注意したからね!では、どうぞ。(了)

2004/09/03 追記:

上記サイトですが、 管理者の橘睦月さんが作家としてデビューすることになった為、それに伴い残念ながら2004/08/30をもって閉鎖されることになりました。