カツモクせよ!シリーズ@

このシリーズでは、私が個人的に深い思い入れを抱いている演奏や、後世に残るべきだと思う演奏、あるいは、理屈抜きに面白いと感じた演奏について、主観丸出しで紹介します。

Harry Belafonte's
The Long Road To Freedom : An Anthology Of Black Music
… by K.I.


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ハリー・ベラフォンテの矜持

わたしのことを、ガチガチのクラシックファンだと思う方が多いかもしれません。
とんでもない。わたしはノン・ジャンル主義です。ジャンル分けして、音楽としての優劣をつけたがる見方は、唾棄すべきものと考えます。
このシリーズは私が村正シリーズとともに最も力を入れるシリーズであり、本来は私のいまだオープンしないホームページのメインを張るべきシリーズでもあります。
これらの演奏を聴くことによって、これを読むあなたの(私の中にもある)中に潜む、既製の固定観念は、破壊されるかも知れません。(これを書いているということは私自身、一度破壊されてます)

ジャズ、R&B、ブルース、ゴスペル、スピリチュアル、ロック、POPS、演歌、クラシック、古楽、ロム・ポップ、トラディショナル、謡(能楽)・・・
世にたくさんの音楽がありますが、およそ、音楽の中に人間の価値を認め、音楽を愛する人であるならば、自己の存在価値を証明しうる力を持つ民族音楽に敬意を払うことに、異議はないでしょう。

異民族が他民族についてなにがしかの理解を得たいと思ったとき、最も有効な方法は、彼らの歴史を活字によって知ることではなく、彼らが生み、大事に育てた独自の音楽を、理屈抜きに聴いてみることではないでしょうか。

ここでの主役は、アメリカにおける黒人です。
と聞いてすぐイメージする音楽は、ゴスペルか、ブルース。アートクルーで初めて聴いたLIGHTNIN´HOPKINS の『Goin' Away※1は、今では愛聴盤の仲間入りをしています。
でも一般的なイメージは、ひとつのジャンルとして確立されたそれでしょう。
ハリー・ベラフォンテがものにしたのは、もっと古い時代から唄われてきたものを含む、いろいろな種類の黒人の音楽。彼らが生活の中で、かなり幅広く音楽をたしなみ、唄とともに生きていたことが(別にアメリカの黒人だけに限ったことではないでしょうが)伝わります。

理屈はともかく、彼らのルーツであるアフリカの音楽で始まる一曲目、ガーナの’WAR CHANT’が流れた瞬間から、異文化に触れる衝撃が、心地よく身体に響きます。と同時に、黒人の音楽について、実は私たちはよく知らなかったのだ、ということを感じます。
それは地元アメリカの人にとっても同じだったようで、この音楽集はかなりの反響を呼んだようです。ビリー・ホリデイの『奇妙な果実』は有名でも、黒人音楽の原形はほとんど忘れられかけていた、ということでしょうか。
考えてみれば無理もありません。マイノリティーなんですから。日本における奄美の島唄や西欧における古楽と似たような境遇なのかも知れませんね。本当は、既製の洗練されたものより原始的な力は勝っているのに、『いま流行っていない、主流でない、古い』ことを理由に、正しく評価されない。
ハリー・ベラフォンテは、そうした現代アメリカ人の錆び付いた感性を再び、逆転させてみせた。
こんなこと、誰にもできるものではありません。可能にしたのは、ハリー・ベラフォンテ自身の矜持ではないのでしょうか。

彼がメインで歌っている曲もありますが、録音年不明の古い音源もたくさん収録されています。(了)

※1 2003/01/11現在このアルバムはxrcdとしても発売されていて、アートクルーで購入が可能です。
… by 管理人