BELAFONTE AT CARNEGIE HALL / HARRY BERAFONTE
…by K.I.


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DANNY BOY / 作詞:Frederic Edward Weatherly (1848-1929)

おお、ダニー・ボーイ、笛の音が呼んでいる
谷から谷へ、そして山辺へと響きわたる
夏は去り、バラもすべて散った
お前は行き、そしてわたしは忍ばねばならぬ

だが牧場に夏が来たら お前も帰ってきておくれ
そして谷が静かに白雪におおわれたら、
日が照ろうと、かげろうと わたしはここに待ちます
おお、ダニー・ボーイよ、わたしはこんなにお前を待ちわびるのです

だがもし、花々の枯れるようにお前も散ってしまったなら
お前がもし万一死ぬようなことがあったなら
わたしはお前の眠っている場所を探し求めて
ひざまずき、お前にわかれの挨拶をしよう

だが牧場に夏が来たら・・・・・・・・・(以下反復)

歌詞対訳:中村とうよう

このCDは1959年4月、カーネギーホールでの慈善公演のライブ録音。第一部:アメリカ黒人の心(6曲収録)、第二部:カリブの島々から(7曲収録)、第三部、世界の歌めぐり(6曲収録)から構成されています。

先日見たニュース番組の中で、イラクで息子(アメリカ軍兵士)を失った母が反戦へと考えを変えたという話がありました。番組のテーマは、情報戦争。いやな言葉です。そのアメリカの母は、息子がどこでどんな風に命を落としたのかも知らされず、自分と同じ思いをする親がこれ以上増えることには耐えられないと感じたのだとか。時すでに遅い。彼女はこれから、この曲をどういう想いで聴くのでしょう。
それでも、そうした1000人の声が政治を動かすことになるのかどうか。
同じ番組中でのこと。ある米軍関係者いわく「いかなるときでも、兵士の死は尊厳なものでなければならない。」
ごもっとも。軍は常に兵士の戦死に意味を与えねばならない。無駄な犠牲だった、防げた死だったなんて、口が裂けても言えません。仕事ですから。兵士の死は名誉の象徴として祭り上げられることもあり、また隠されることもあります。

この歌詞はこの通り、一切政治色がありません。だからスタンダードとしての生命力が強いのでしょう。ハリー・べラフォンテは黒人系特有の渋い声、はじめはアカペラでゆっくりと歌います。後半はオケの演奏付きですが音量は程よく抑えてあり、静かに最後まで歌い上げます。録音バランスが非常にシンプルで余計なエコーが少なく、声を大事にしているので聴いていて自然に曲の世界に入ることができます。
名曲と、名唱の世界。時代と国境を超えたメッセージ。こういう音楽と出会えるから、オーディオはいい。アイルランドの伝統曲がもとだそうです。

わたしはこのCDではこの曲ばかり聴くので、つい満足してほかの収録曲を聴かないままで終わることが多いのですが、第一部も貴重です。黒人霊歌などはやはり本物の黒人系歌手でないと歌いこなせないと思います。以前ジェシー・ノーマンの霊歌を生で聴いて「これは一生の宝だ」と思いました。魂のこもった音楽。本物を生で聴く大切さは聴いてみて初めて理解できます。
(黒人霊歌、ルーツ音楽などに興味がある人には『The Long Road to Freedom: An Anthology of Black Music 』[BOX SET] がお奨めです。ハリー・べラフォンテの労作。)(了)