ノン・ジャンル主義F
〜ジャンルにこだわらず、心地よく聴ける音楽〜

two year winter / bill jones
… by K.I.


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(COMPASS RECORDS 7 4366 2)
ボーカル:ビル・ジョーンズ
録音:2003年 全12曲収録

冬。 フォーク。

久しぶりに、歯ごたえのある音楽を聴きました。
ビル・ジョーンズはイギリスのフォークシンガーです。基盤にあるものは伝統音楽(トラッド)としてのフォークソング。ただ、単純に伝統の枠の中だけで演奏するつもりはないようで、伴奏もギター、フィドルのほかにアコーディオン、ピアノ、簡単なバンドなどシンプルではあるものの、古くて“死んだ”音楽を聴かされている、などという違和感は皆無です。アレンジだけでなく歌詞にも独自の解釈を加えて改変することさえもあるそうです。表題曲などは、あちらから見れば異民族であるはずの私が聴いてもふと沁みてくる歌唱。

ピーター・バラカン氏の評をチェックしているような方ならば既にご存知な歌手なのかもしれません。私の場合は予備知識なしで、CDのジャケットを店頭で見かけて、勘だけで購入しました。結果、大当たりだったというわけです。
彼女のことはすでにイギリス本国ではかなりな話題となっているようです。2004年11月現在でデビューしてまだほんの4年くらいしかたたないのに、CDを立て続けに出してその筋で有名な専門誌にも取り上げられる。このジャンルとしては成功のステップが急であるらしいのです。

内容ですが、基本的に“節回し”がやはりイギリスあるいはアイルランドにも通じるやや翳りと落ち着きを感じるものです。日本で紹介されている解説には一部キャロル・キングの『Tapestry』を引き合いに出してビル・ジョーンズの音楽の革新性などを強調する風もありますが、わたしが感じる風合いは両者全く異なります。キャロル・キングにはどうしてもある種“時代性”を感じるのですが、この演奏はあまりに自然に伝統と今が共存している印象が強く、時代を超える香りを感じるのです。ちょうど、ベートーベンの音楽を何度聴いても古さを感じない、あの感覚に似たものを。
ルナサを聴いて「新鮮だけど、もっと落ち着いた感じが欲しい、惜しい」と感じた人にはお薦めです。

声質は軽やかでややハスキー、その分派手さや強さはなく、テクニックを誇る風でもなし。実に簡素です。これを癒しなどとありがちな表現で伝えるのは簡単ですが、そう平凡なものではないと思います。今どき、こんな地味な声でありながら見事に音楽に溶け込んでいるボーカルには、めったに出会えないでしょう。
音楽の素晴らしさとはかけ離れたことばかりが聞こえてくる今、ビル・ジョーンズを聴く人は、何かを想い出すことになる。何を想うかは人それぞれですが。(了)