宣戦布告〜もうひとつの戦争
… by K.I.
彼らが非喫煙者たちのあいだで英雄として後世永く語り継がれるのか、それともドンキホーテとして名を残すのか。今はまだ誰にもわかりません。
アイルランドでは3月29日午前零時から、人が集まる室内での喫煙を全面禁止するそうです。法律で。ということは、パブでギネスを飲むときも、なんと禁煙!・・・喫煙者の逃げ場は屋外以外はほとんど自宅だけになってしまいます。しかもこの法規制、全国一律だとか。都心部だけの規制ではないのです。屋外に逃げたら逃げたで、どうなることやら。
違反者には最高3000ユーロ(約38万円)の罰金が科せられるらしいのです。
用意された理由は、案の定、健康への悪影響。医療費削減効果。この根拠にこそ、非喫煙者が長年に渡って周到に準備をしてきた痕跡を私は感じるのです。
もう、いつからでしょうか。喫煙による健康への悪影響が盛んに言われ出したのは。その頃は「やはりな」としか思いませんでした。でも、今考えると、きっとどこかの国の非喫煙者が、煙草撲滅を密かに狙って研究を重ねたに違いありません。禁煙ブームもそう。きっと、非喫煙者の陰謀なのです。
ところで、JTはつい最近、熱心にマナーアップ・キャンペーンをやっています。商品を売るための外国人を使った格好好い広告ができないからですが。
ある日新聞を開いた私は、ぎょっとしました。
「はじめに謝ります。すみません。・・・」
いや、いいんですよ。JTが街角に灰皿を用意しなかったから、マナーの大切さをアピールしなかったからといって、謝る必要はない。過去のマナーの悪さをメーカー自ら背負い、大々的に下手に謝る。よくも悪くも、いかにも日本人的な手法が鮮やかな広告です。でも、メーカーが謝る必要はありません。煙草を吸う行為が謝るということに結びつくようなら、喫煙者の居場所はなくなってしまいます。第一、気まぐれにどこへでも行こうとする煙を、誰もコントロールできないでしょう。周囲の非喫煙者に影響を全く与えずに煙草を吸うことは不可能なのです。それを謝られては、どうしようもありません。
それよりも、私にはこのJTの『謝り』、実は半分が喫煙者に向けての内向きなものであるように読めたのです。環境を整えなかったせいで、喫煙者の皆様に肩身の狭い思いをさせて、すみません。と。
ただ、今回のこのアイルランドからのニュースは、JTのせっかくの狙いを無視するかのような、極めて乱暴な内容です。JTの目指すところは、喫煙者と非喫煙者の共存でしょう。それしか道はありませんから。
非喫煙者も、それは良く理解してきたはずなのです。少なくとも今までは。
日本でも非喫煙者はずっと喫煙者と共存してきました。おそらく日本の非喫煙者は世界中で最もおとなしいはず。どんなに職場や居酒屋が煙で満たされていても、黙ってきたはずです。なぜなら、ひとたび非喫煙者が「だめだ」と言い出したら、そこは一瞬で緊張した場になることを非喫煙者はよく知っています。それくらい、非喫煙者にとっては煙草は生理的に致命傷なのです。だからいつも、たいしたことはないと常に自分に無意識の暗示をかけ、不快感を知覚しないように工夫しているのです。加えて、非喫煙者は圧倒的に少数派です。居酒屋では、非喫煙者には表情にも出さない忍耐こそが求められるのです。それができて初めて、喫煙者と共存できるのです。
アイルランドでも、事情は似たようなものだったでしょう。それを、こうも正面切って大胆な宣戦布告をするとは。アイルランドの非喫煙者は、史上最大のタブーを犯してしまった。
さて、この反乱、吉か、凶か。
ノルウェーも6月1日に一律禁煙を導入する予定だそうです。どうやら、“彼ら”は、本気で戦争をする気のようです。人類史上類を見ないといっていい、無謀な戦争を。
私ですか? ・・世界一おとなしい非喫煙者です。(了)
※ちなみに私は愛煙家です。… by 管理人