「村正試作1号」製作記
… by K.I.
村正小休止編〜
V 村正とTERAのリファレンス・CD / 中〜小音量再生の悦楽 ●3
@品番:POCG-3225 ドイツ・グラモフォン
ベルリオーズ:幻想交響曲 作品14 / 劇的交響曲<ロメオとジュリエット>作品17「愛の場面」
演奏:小澤征爾指揮 / ボストン交響楽団 / ニュー・イングランド音楽院合唱団
録音:1973年2月、1975年10月 ボストン、シンフォニーホール
小澤は1973年にボストン響の音楽監督に就任。この録音は40歳になるかならない頃。
小澤はとにかくリズムを鋭く刻む演奏をします。この幻想などはその典型。逆にいうと大きくうねるような大胆な揺れはあまり感じません。この録音は音響上の評価が高いというボストンシンフォニーホールでのものです。ライブではないので、ホールのたっぷりとした響きがよく伝わります。
私の聴き所:
村正があまりいけてないときは、この演奏はとてもつまらないものに感じられました。その頃わたしはあまり小澤の演奏によるCDを持ってなくて、生で聴いたこともなかったので、私は小澤のことを「たいしたことない指揮者」だと思っていました。
ところが、いろんな調整が進むにつれて、その先入観が私のシステム調整の未熟さが原因だったことがわかりました。
村正の調整に際して注目したのは、第4、第5楽章のオーケストラならではの迫力が伝わるかどうか。
ポイント:
特に第5楽章では金管群が終始活躍します。システムが金管群をうまく再生できないと、私はこの曲を心から楽しめません。
第5楽章の演奏開始から3分17秒くらいのところで、チューバが大事な旋律を吹きます。ここでへなちょこな演奏をされると、元も子もない、それまでの努力が水の泡になってしまいます。初期村正にとってここの部分のチューバは最も苦手な音でした。あの、『ブワヮァー』という、腹に響く感じが、なかなか出ませんでした。フルートの再生がそこそこなレベルに達しても、それよりもっと大きな広い振動と音の伸びを必要とするチューバの太い存在感。
これを判断するには最適な演奏でした。
A品番:PHCP-11149 フィリップス
チャイコフスキー:交響曲第5番
演奏:ワレリー・ゲルギエフ指揮 / ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1998年7月 ザルツブルク(ライブ録音・拍手、歓声付き)
交響曲部門の、私の愛聴盤です。録音のバランスもいい出来。ウィーン・フィルの艶のある音色が、ゲルギエフの指揮で躍動感いっぱいに広がります。聴き終わったあとこれほど爽やかな気分になれるチャイコフスキーの5番は、ほかには見当たりません。クラシックのジャンル以外で探しても、これほど幸せな演奏の記録は、滅多にはないでしょう。ウィーン・フィルはラトルよりもゲルギエフの方が、曲によっては相性がいいのかもしれません。
私の聴き所:
システムが未熟な頃は、この演奏のダイナミックな雰囲気がうまく表現できませんでした。本当はもっと激しさや熱気もあるはずなのに、平面的に聴こえてしまう。表現に深さが足りない。
実際は、名演といわれる過去の巨匠指揮者による演奏ですら表現できなかった、この曲本来の情熱が強烈に伝わる熱演です。世界一の楽団の演奏を日常的に標準とし、名演には慣れているはずのウィーンの観客が、めったにやらないというスタンディング・オベイションをしたという理由に、共感できるかどうか。それこそが唯一、聴き所であり、この演奏を再生するときのオーディオ・システムにとっての課題です。
ポイント:
第4(最終)楽章、開始から5分20秒くらいのよく通るトランペット、これは比較的再生が簡単。
問題は、同楽章の、ホルン、です。ウィーン・フィル特有の、高度な演奏技術を要すると言われる、あのちょっと変わった形のホルンの響き。
前面に出るのはトランペットなのですが、ホルンはちょっとだけ、表に顔を出します。3分15〜20秒のあたりと、7分3、4秒のあたり。ここで同じ旋律の反復があり、8回づつ、短く鳴るホルンを聴くことができます。決して目立つ印象ではないんですが、このホルンの音、実に、再生しづらいんです。このホルン特有のくすんだふくよかさが、なかなか出ない。ひどいときは、ぺしゃんこにひしゃげてしまったような音がしました。アートクルーで聴いても、システムを選ぶ音でした。再生が比較的楽なトランペットがいい音で鳴っても、この部分のホルンの音が出ないのでは、私としてはそのシステムを認めることができません。会場ではホルンの音はちゃんと聴こえたはずだし、その音はきちんと録音されているはずだからです。全体の録音がこれほどいいのに、ホルンだけ妙に音がつぶれる理由は、どこにもないはずです。
現在の状況
いま(平成15年6月)では完全に、ごきげんな再生です。気のせいか、なぜかここしばらくシステムの構成をいじってないのに一段と音の充実度が良くなった印象。各パーツのエージングは充分進んでいると思っていたんですけど。耳に狂いはないと思うので、有り得るとすれば、音質から判断して、ドライバーと、これを支えているカーボン・ブロックとの相性、この部分のエージングしかありません。でなければ、ホーンの油。結果的にかなり塗りこんだので、気象の変化と経年とで特性が微妙に変わりつつあるんでしょう。これも、自作ならでは。ということでしょうか。
結局、金管楽器群は、マイ・システムの、一番の得意分野になりました。ここだけ聴くのだったら、充分に、ハイエンドクラスといっていいでしょう。(私は滅多にこういうことを口にしないので、これは相当にいい音が出ているのだと思ってください)(ただし試作なので、箱の調整による影響は評価からは除いてます。最も基本的なところであるのはわかっていますが。) (続)
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