「村正試作1号」製作記
… by K.I.
閑話休題〜shakable主催・ArtCrew協賛イベント
「最新アナログ・オーディオ・システムと原盤LPで辿る英国ロック・ヒストリー」
(H.15.4.13 / 於:アートクルー・シアタールーム)に参加 ●1
といっても遅れて出席したのですが、幸い少しおしていたので、半分近くは聴くことができました。とにかく、盛況でした。原因はやはり、“最新アナログ・オーディオ・システム”と“ロックの原盤LP”という、オーディオショップではなかなか有り得ない組み合わせだったのでしょうか。
わたしはアナログレコードを23歳頃までは聴いていました。ただし、うんと安いシステム・コンポで。
当然、カートリッジは安価なMM式。ワンタッチで針ごと交換できるタイプ。スピーカーも最悪で、薄っぺらい音しか出ませんでした。しかもそのコンポ、家電屋さんが片手間に作ったものだったのです。音質は、推して知るべし、でした。
当時何より閉口したのは、うっかり手入れを怠ると、針の劣化のせいでせっかく貯金して買ったレコードの音質が一発でだめになってしまうこと。またあるときはカートリッジの選択を間違えて、不適切な針圧で(?)レコードをだめにしたり。ひどくいい加減な有様でした。でも学生だったし針の交換はままならず。一応クリーニング・キットもそれなりにいろいろ買って使ってはいましたが、わたしのような怠け者には不向きな道具でした。だから、CDの登場で安いCDプレイヤーが普及し始めたとき、針の交換が不必要で音質の劣化もないと聞いて、迷うことなくそちらへ乗り換えたのです。
アナログ・オーディオファンが聞いたら泣いて悲しむような私とアナログ・オーディオの関係でしたが、それでも、アナログとCDの音質の違いはなんとなくわかりました。安い再生装置の世界では、要するに、CDでは余計な雑音はなくなるけど、高域の鋭さがなくなる。CDの音にはなんとなく特有の音色が乗る。
当時の私にとっては、ただそれだけのことでした。
それから時が過ぎて、高級なアナログ・システムの世界を知らないまま、わたしは村正のチューニングを、CDの使用を前提にして進めています。最近はCDも、ノーマルなCDプレイヤーで従来よりは高音質の再生ができるという、XRCDなど、質のいいCDが出始めていますので、CDの再生の進歩については、少しはわかります(ただしコンバーターやクロック・アップなどによる改善は、現有システムでは未経験です)。そのわたしが高級アナログ・システムを聴いて、どう感じるか。自分でも、興味がありました。
アナログ再生の音世界
感想ですが、さすがに高級システム+高音質LPだけはあるな、と思いました。それまでそこそこのアナログシステムで聴いたときにふと感じた空気の密度の薄さ、音質の軽さが、ほとんど気にならなかったからです。これなら、アナログ特有のシャキッとした高域も生きます。もともと肌触りが心地よいアナログだから、音楽を聴く快感は高い。充分、納得のいく音質でした。あの音にクレームをつける人など、評論家でもいないでしょう。
これはあくまでもわたしの主観なのですが、アナログ(LP)とデジタル(CD)と、どちらが優れているか、という乱暴で単純な比較は不毛です。思うに、アナログファンは、アナログ再生特有の音を基準にして良し悪しを判断するのに対して、わたしのような非アナログのオーディオファンは、現行のCDの音質を基準にして良し悪しを判断するはずなので、基準が違えば評価が違うのは当たり前なのです。
そこで、ここからは非アナログシステムの使用者としての私のちょっと(たぶん性格からくるのだと思います)冷めた感想です。
質のいいアナログの音は、例えるならば木綿のシャツ。風通しのよさ、肌触りの質感が、満足感につながります。
対してCDの音は、化学合成繊維のシャツ。肌触りという特殊な快感はありませんが、吸湿、温度調整などの高機能で、シャツとしての機能は基本的に高い。
“アナログ絶対主義者”(ほんとにいるんでしょうか。そんな人・・)から見ると、化繊のシャツには木綿のシャツような着心地がないから選択としては有り得ず、“CD絶対主義者”(これもある意味CDの進化にとっては不毛な考えでしょう。ほんとにいるんでしょうか。そんな人・・)から見ると、木綿の良さは認めても、総合的な機能性と利便性で選ぶから、化繊が手に入る以上、いまさら木綿にこだわらなくてもいい。それだけの違いでしかないと思います。
少し厳しく見れば、アナログの限界とは、やはりダイナミック・レンジとS/N、高コスト・パフォーマンス、レコードの記録媒体としての未熟さ(劣化しやすさ)でしょうか。
一方CDの限界とは、やはりフォーマットに関する現状における問題(ようやくXRCD24のような技術が出現したばかり、という事実)、リマスターの技術も同様にようやくこれから、という印象、何より経験値の低さ(アナログの歴史に比べて)、でしょうか。
これを逆に裏返せば、それぞれの良さ、ということになると思います。アナログには(道具としての魅力も含めて)味わいがあり、CDには可能性がある(コンバーターの成熟、クロックに関する話題など)。
どちらもあり、でいいんじゃないかな、とわたしは思います。今回のイベントに参加して、ますますそう思いました。(続)
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