「村正試作1号」製作記
… by K.I.

ムラマサ誕生編〜U 斬馬剣? ●1

雑感

前回で、それまで無名だった自作スピーカーに村正という名をつけました。このとき自分の中では『村正』でしたが、あとで振り返ると、“なんちゃって村正”だったので、ここではムラマサと表記します。

ところで、そのときのムラマサの実力ですが、このときの私自身の感覚では、明朗闊達な、出足が鋭くて表現が柔軟、どんなソフトでもそこそこ鳴らせるスピーカーで、透明感とスピード感と、重たくならないエネルギー感などが魅力でした。
無理に例えると、B&W804+JBLS143風、でしょうか?

ところでわたしはこの試聴前、自宅でムラマサを聴きながら、いろんなことを考えていました。『村正』への脱皮の話の前に、いくつかそのとき感じたことなどを少し。

スピーカーの理想?

スピーカーの自作、ということを探り始めると、多くの人が、この問いに出会うでしょう。いわゆる解説本などでは、理論の面から、この問いに答えています。
『スピーカーの理想は、点音源です』
この説が広く普及しているからでしょう、こう言う人も多くいるようです。
『スピーカーの理想は、点音源だと言われています』

理論の世界に遊べば、たしかにそういう説も一理ありそうです。その根拠は、乱暴に言うと、定位すなわち楽器と楽器、あるいは声との位置関係がより自然になり立体的で現実に近づくから、ということのようです。でもこの説には、忘れてはいけない前提条件と、忘れられがちな問題点があります。
前提条件とは、定位が自然でも、より現実に近づくためには、実際と同じように、空気が振動する必要があること。
問題とは、この場合、目指している理想が、実際の楽器や人の声に近づくということなのかどうか、でしょう。専門誌でよく見かける『原音再生』といったら近いのでしょうか。でもわたしは、日本人の言う理想が、単一的なものを目指している気がしてなりません。本当に、実際の楽器や声と同じ音を聴きたい、という人が、一体いくらいるのでしょう。
日本の雑誌で見かけるこの言葉の意味を杓子定規に解釈してしまうと、以前わたしがドライバーを無抵抗で鳴らしたときのような音を想像してしまいますけど、本当に目の前で鳴る楽器の音は、きつすぎて、落ち着いて聴くに耐えないでしょう。隣近所から、苦情が来てしまいます。
あたりまえのことですけど、米粒みたいな点音源のスピーカーができたとしても、それは、JBL風とか、B&W風、タンノイ風、KEF風、スペンドール風、など、音色や音場感、スケール感がいろいろなくては困ります。

ところで、わたしがフルレンジを作らずマルチウェイにしたのは、わたしにとっては正解でした。もともとは、ボーズで聴いていた音に物足りなさを感じたから、鋭い高域や豊かな低域を欲しいと思ったのです。ムラマサの音を聴いていると、以前感じていた欲求不満が、見事に解消されているのを感じました。それに、定位も分離も、ずっとこの方がいい。

聴いてて思ったのは、聴く側の想像力をかきたててくれるスピーカーこそが、わたしの理想である、ということ。
そういえば昔、こんな主旨の文を専門誌で読んだことがありました。
「トールボーイタイプのスピーカーは、金管楽器がツイーター付近から聞こえるから、これはホールにあてはめると二階席で金管楽器が鳴っているようなもので、おかしい」
ほんとに、そうでしょうか。人間の耳(感覚)は、そこまで正確でしょうか。
わたしは、ホールでオーケストラを聴くとき、いろんな音を無意識のうちに意識して聴いています。たとえば指揮者がチェロの方を向いたら、つられて自然とチェロの音を中心に聴いています。ボーカルに集中しているとき、伴奏のピアノの音色など、たいして気にしていません。それくらい、いいかげんなんです。もし目隠しをされたら、ホールで聴いても、オーディオを聴いても、楽器の位置関係なんて、たいして重要ではなくなるはずです。(実際私は目をつぶってS席でオーケストラを聴いたことがありましたが、視覚の影響を受けているときとは、全くイメージが違いました。)
音楽を何のために聴きたいのか。
金管楽器は二階席で鳴ってはいけない、なんて聴き方、悲しすぎませんか?

第二回・試聴 斬馬剣?〜はずれ万馬券

『今度は、自信がある!』

そういう思いを秘めて臨んだ、アートクルーでの第二回目の試聴。 ところが・・・。


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わたしの最愛聴盤、ゲルギエフ+ウィーンフィルの、チャイコフスキーの5番。ティンパニがいい味出しているのに、アートクルーでは、これが全く鳴らない。「こんなはずでは・・・」と思っても、現実は現実。
そのほかの曲ではボロが出ないときもあるようでしたが、これは決定的でした。
早速、帰って、ドライバ・ホーンの下のボードをもとの状態に戻しました。やっぱり、この方がいい。

ただ、問題は、あの、高域の歪みです。正直、原因がわからない。
ただ、以前、ツイータ用のコンデンサがよく固定されていなくて高域に問題がでたこともあったので、一応、いろいろ注意してみるしかない。
それからしばらく、また、試聴用ソフトばかりで、テストの日々。

と、全く予想外のところに、犯人は隠れていたのでした。もしわたしがアートクルーに通っていなかったら、永遠に発見できなかったでしょう。それくらい、完璧な隠れ家でした。(続)