EAU ROUGE ER-PSX
… by K.I.


画像:http://eau-rouge.jp/より引用

わたしが電源まわりを強く意識するようになったのは比較的最近のことです。手をつけやすいものとしてプラグ、コネクターとケーブルの組み合わせでいろいろ試行錯誤してみたのですが、ケーブルに対するプラグの影響の大きさにまず驚きました。せっかく狙う音があっても、場合によってはプラグひとつでイメージ通りとはいかなくなることがありました。あるいはケーブルの特徴がプラグと合わなかったり。
当然、壁のコンセントの影響も大きいのはわかっていました。ただ、これほど基本性能の高いオーディオ用コンセントが現れるとは予想外でした。

壁コンセントに対して想定される理想とはなんでしょう。理系なことはわかりませんから、素人丸出しで考えてみましょう。

○接続するプラグ、ケーブルにできるだけオーディオ向きの良い電気を供給すること
○音質ができるだけ自分の好みに近いこと

こんなところでしょうか。いずれも、家庭用のコンセントに望むのは無理な注文です。オーディオ機器が電気で動く限り、また、屋内配線をオーディオ用に工事しない限り、壁のコンセントはオーディオの入り口になります。ここで何かの“損失”や“混入”があると、そのあとの機器にいくら工夫を重ねても効果は100%にはなりません。
また、オーディオ機器には個性があるから、コンセントにも個性があり、その音質が自分に合うかどうかが重要になる。
頭で考えると、ざっとこういう具合です。
ただ、これは実際に壁のコンセントを家庭用からオーディオ用に交換し、更に複数のオーディオ用コンセントの音質の違いを体験してみないことにはなかなか実感できない話です。

メーカーの説明によるとER-PSXは電極接点部分が銀メッキ処理です。その処理の質が高いのだとか。
ちなみに銀というと、音質のイメージとしては高域が澄んでいて良く伸びる、綺麗な感じ。それが一般的でしょう。
もうひとつ、特徴としては振動対策にカーボンを使用しています。コンセントに振動対策とはマニアックな。コンセントベースで味付けをしていた私でも、そう思いました。実際に聴くまでは。
わたしが試したオーディオ用壁コンセントとしてはこれが3つめですが、正直に言うと、今までは
「コンセントはそこそこ納得できるものがあれば充分で、あとはケーブルや電源タップや、機器そのものに投資したほうが費用対効果が高い」
と考えていました。既製の高いケーブルなどに比べるとプラグやコンセントはそう値の張るものではありませんから。

さて、肝心の音質はどうでしょうか。以下は私のシステムに導入した結果による感想です。

まず強く感じたのは、空気が一気に澄みわたって、音自体の存在感が濃厚になったこと。
それから、全帯域に渡って音色に癖を感じることがなく、「高域はこうで、中域はこう、低域はこんな感じで出てくる製品です」という月並みな評価があてはまらないということ。
更に、演奏のエネルギーがストレートに伝わること。そのエネルギー感に押し付けがましいところがないこと。
全体にはそんな印象でした。

ただ、このコンセントが優れているところを的確に表現しようとすると、先に書いたような表現では不充分です。もう少し詳しく書いてみましょう。

何もない空間に、ピアノの音がひとつ、明瞭に刻まれる瞬間。鍵盤が叩かれ、音が生まれたその瞬間、直後に生まれる微妙な響き、音のうねり。
あるいは、佐渡 裕/新日本フィルの2002年8月のライブ演奏、ベートーベンの交響曲第9番・第4楽章。10分35秒〜36秒、合唱が大音声を張り上げた直後の2秒間。最終局面へ向かって怒涛の疾走を始める前の一瞬の、完全な静寂。
あるいは、ハワード・ショア/ロンドン交響楽団のコンビが圧倒的な描写力と好録音で聴かせ、ルネ・フレミング、サー・ジェームズ・ゴールウェイ、アニー・レノックスらの参加が粋な、映画のサントラにしておくには惜しい『オリジナル・サウンドトラック:ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』。神秘的なボーカルの旋律と、暴力的なまでのオーケストラの迫力。
あるいは、波多野睦美/つのだ たかしで聴く『優しい森よ』での、透明で澄んだ空気をそのまま切り取ったような録音。

こういった、いかにも“オーディオならではの快感”というべき瞬間に遭遇したとき、「ああ、このコンセントはただ者ではないのだ」と実感するのです。
そのとき、ピアノの音はただ楽譜をなぞるだけのものではなく、楽器と演奏者の情熱が一体となった有機的な響きが無限に続くかのようであり、無音はただの無音ではなく、次の瞬間に生まれる音への期待と恐れを抱かずにはおれないような“圧倒的な静寂”となり、ボーカルの神秘性は人間の艶めかしい息遣いによってより深く彫刻されるのであり、空気さえ切り取る優秀な録音技師の職人技は部屋の空気をも一変させることになるのです。

壁コンセントから先の、使い手の感性とチューニング技術を試そうとするかのような、不敵なコンセント。
それが、ER-PSXの正体です。セッティングやチューニングに気を配っていない人には不向きかもしれません。

コスト・パフォーマンスですか?
「クラシックを聴く私にとっては、信じ難いほどコスト・パフォーマンスが良い」
そう答えておきましょう。

EAU ROUGE ER-CBX, ER-CPX

ER-CBX
ER-CPX
画像:http://eau-rouge.jp/より引用

単体でER-PSXを使う場合、組み合わせるコンセントベースの特徴がよりはっきりと出ます。ER-CPXだけでもEAU ROUGEの特徴はわかりますが、3つをセットで揃えると、効果は3乗です。(了)